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按摩・マッサージ

按摩・マッサージ師のための治療法講座(2)

肩こりというと多くの本には僧帽筋の緊張と書いているが、違うと思う。主要な筋は肩甲挙筋、斜角筋になる。僧帽筋よりも一層深部の筋。もちろん僧帽筋にも緊張の出る肩こりがないというわけではないが、頑固な肩こりは僧帽筋ではなく、肩甲挙筋と斜角筋である。

したがって、按摩やマッサージで対象とするのは、肩甲挙筋と斜角筋が主でなければならない。

肩甲挙筋は、頚椎1から4の横突起から出て肩甲骨上角に行く。斜角筋は、頚椎2から7の横突起から出て第1肋骨、あるいは第2肋骨、時には第3肋骨に行く(もちろん前・中・後斜角筋と3つあるが)。この走行をしっかり感じ取り、緊張を取るようにしなければならない。

肩が凝っているからといって、闇雲に肩を揉むのは上手な方法とは言えない。その患者の肩こりが一体どの筋に相当するのかを考え、治療を施さなくてはならない。そのためには、なぜ凝っているのかを考える必要がある

多くの場合は姿勢に起因する。背中を丸くした座り姿勢だ。このような姿勢になると、肩甲挙筋に常に力を入れる形となる。呼吸も浅くなり、呼吸筋である斜角筋にも負担が来る。

もちろんその他にもその人の肩こりの要因があるだろう。肩が凝っているからと肩を触るのではなく、その原因に対処しなければならない。姿勢不良ならいい姿勢を指導する必要がある。いい姿勢になりにくい状態になっているのであれば、例えば腰部や背部にも施術をする必要がある。拮抗している筋である大胸筋や、その他小胸筋、小円筋、大円筋などにも反応が出ることもよくある。それぞれに対処する。

次に考えなければならないのが、手技の選択である。肩こりに揉んでばかりしていないだろうか。もちろん揉捏は有効な手段である。しかし、こればかりに頼ると、筋膜や筋線維に不可をかけすぎて、組織が硬くなってしまう。圧迫や摩擦も十分使いこなして治すべきである

さて、では、肩こりを東洋医学的に見るとどうなるだろうか。

一つは、経脈の阻滞である。肩には足少陽胆経をはじめ、手太陽小腸経などが通っている。しかし、肩は「冷える」ところであり、また、「力の入る」ところでもある。そのため、気血が鬱滞しやすいのである。この場合の治療は局所的にまず行う。次にその経脈上の反応穴を選択し瀉法を行う事により、気血を流してやれば良い。もし寒邪が原因ならば、肩がこったところによく摩擦を行い温めるというのも効果的である。

肝気欝滞(肝気鬱結)でもよく肩がこる。肝気が停滞し、そのために筋に緊張が出る。肩、上背部などの緊張が出る、のぼせる、怒りっぽい、いらいらする、不眠などが主な病症である。これは実証なので、曲泉などの瀉法を加え、肝気を流してやると良い。

肝陽上亢は虚証である。肝陰虚により肝陽が遊走し、上亢することにより肩付近に肝気が溜まる。そのために肩がこる。肩こりのほか、のぼせ、足の冷え、いらいら、不眠、喉が渇くなどの病症が出る。肝陽は部分的に瀉法を行うのでよいが、基本は虚証なので、補法も忘れてはならない。ぼくの場合、曲泉に瀉法を少し行った後に補法を行う。すなわち、曲泉に反時計回りで輪状揉捏を少し行い、緊張が緩んだら、持続圧迫を行う。加えて、肝陰虚には腎を補わなくてはならない。したがって、太谿穴に補法の圧迫を行う。もちろん、肩にも施術するが、圧迫と摩擦を中心とする。その他下腿の足厥陰肝経と足少陰腎経に経にそって摩擦を加える。

肝の病症から脾胃に病症が及ぶことがある。血が少ないために脾胃に必要な血が回らず、疲弊するのである。そのため、消化器症状が出る。すなわち、上腹部膨満、食欲不振、下痢または便秘(陰虚により熱が生じると便秘になる)が、肝虚の病症に加わって出る。この場合、肝、腎、脾を補う必要がある。筆者の場合、太衝、太谿、大白、脾兪、胃兪、期門に補法を行う。

肝が関係なく脾胃の病症のみでも肩こりが出ることがある。この場合、肩が凝っていると訴えるが、肩自体は比較的柔らかい。しかしよく調べると、缺盆が緊張し圧痛がある。言うまでもなく缺盆には足陽明胃経が通っている。足陽明胃経の滞りにより缺盆がつまり、それが肩こりとして感じているのである。この際は缺盆に持続的な瀉法の圧迫を行うと共に、腹部の足陽明胃経の瀉法を行う。これは解剖学的な要素となるのだが、斜角筋と腹部諸筋は胸郭を動かす拮抗筋だからである。加えて、足三里、脾兪、胃兪、中などに補法を行う。

手太陽小腸経や手少陽三焦経が問題の時もある。手太陽小腸経は手少陰心経と表裏の関係、手少陽三焦経は手厥陰心包経と表裏の関係である。心虚になると、表裏の関係にある手太陽小腸経や手少陽三焦経が相対的に実し、肩こりとなる。この場合の肩こりは、小円筋や棘下筋、小菱形筋に現れる。局所的に瀉法を行うと共に、前腕の手太陽小腸経もしくは手少陽三焦経に瀉法、すなわち揉捏を行い流れを促進させる。摩擦を経にそって行わなければならないのは言うまでもない。加えて、心や心包を補うために大陵や神門に補法の圧迫を加える。

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