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痰飲・水毒の鍼灸
東洋医学における「痰飲(たんいん)」と「水毒(すいどく)」は、どちらも体内の「水液代謝の異常(水はけの悪さ)」によって引き起こされる病態を指します。
言葉のニュアンスとして、「水毒」は日本漢方(気血水理論)でよく使われる広い概念であり、「痰飲」は中医学において病的産物の性質(ドロドロかサラサラか、ドロドロが痰、サラサラが飲)や局在をより細かく分類する際に使われます。
水液代謝には主に「肺・脾・腎」の3つの臓腑が関わっているため、単に「溜まっている水を抜く」だけでなく、水液代謝に関わる「肺・脾・腎」の働きを亢進させ、水が溜まりにくい体質へと改善していくことを目的とします。
鍼灸では、水の巡りを改善させる「特効経穴」と、それぞれの弁証(原因)に合わせた経穴組み合わせて治療を行います。
水毒・痰飲を改善する「要穴」
どのパターンの水毒・痰飲であっても、基本として非常によく使われる重要なツボがあります。
豊隆
すねの中央外側にある足陽明胃経の経穴。東洋医学において「痰を化す(取り除く)なら豊隆」と言われるほど、痰飲治療の最重要穴です。
陰陵泉
膝の内側の下、脛骨内下縁にある経穴。体内の余分な湿気(水)を尿として排出させる「利水」の働きに優れています。
水分
臍の一寸上にある経穴。その名の通り「水と不要物を分ける」働きがあり、むくみや胃内停水によく使われます。
弁証別の鍼灸治療
先ほどの4つのパターンに合わせて、どのような経穴を使い、どのような刺激を与えるか(鍼か灸かなど)が変わります。
1. 脾虚水停(胃腸虚弱による水溜まり)
胃腸(脾)の働きを活発にして、水の運搬能力を回復させます。お腹や背中を温めるお灸が非常に効果的です。
治療方針: 健脾益気・化湿(胃腸を元気にし、湿気を取り除く)
主な経穴:
中脘:胃の働きを直接整える、上腹部中央の経穴。足三里: 下腿前側、脛骨粗面下縁と腓骨頭を結んだ中央陥凹の経穴。
脾兪:第11胸椎棘突起外側にある、脾の働きをコントロールする経穴。
2. 腎陽虚水氾(じんようきょすいはん・冷えと熱を与える機能低下による水溜まり)
「腎」の温める力(陽気)が冷え切っているため、灸(特に間接灸など)を多用して、芯から温める治療がメインになります。
治療方針: 温腎壮陽・利水(腎を温めて力を与え、水をさばく)
主な経穴:
腎兪:第2腰椎棘突起外側にある、腎のエネルギーを補う要穴。
関元: 臍の下3寸にあり、生命力と体を温める力を補う経穴。
太渓:内果内側にある、腎の働きを高める経穴。
3. 痰濁上擾(頭に痰飲が昇って起こるめまい・吐き気)
頭に停滞しているドロドロの痰飲を下へ降ろし、胃腸を整えることで激しいめまいや吐き気を鎮めます。
治療方針: 健脾化痰・平肝息風(痰を取り除き、頭の異常な高ぶりを鎮める)
主な経穴:
豊隆: 痰飲を取り除くため必須。
百会: 頭頂部中央にあり、頭の気血の巡りを良くしてスッキリさせる経穴。
内関(ないかん): 手首の内側、横紋の上2寸にあり、吐き気や胸のつかえ、自律神経の乱れを鎮める特効経穴。
4. 肺気不宣(外邪による上半身の水滞)
滞っている肺の気を宣散(発散)させることで、全身へ水を巡らせ、同時に毛穴を開いて汗として不要な水を飛ばします。
治療方針: 宣肺発汗・利水(肺の働きを開き、汗や尿として水を出す)
主な経穴:
肺兪: 第3胸椎棘突起外方にある、肺の機能を整える経穴。
合谷: 手の甲、第一中手骨と第二中手骨の間、両者の関節のやや前方、示指寄りにある経穴。顔や頭の症状全般に効き、気血の巡りを良くする。
列缺: 手関節橈骨動脈上、手関節横紋から一寸にあり、肺の働きを助け、咳や痰、むくみを取る経穴。
水毒に対する灸の重要性
水毒や痰飲は、東洋医学では「陰邪(冷たくて重い性質を持つ悪いもの)」に分類されます。そのため、冷えを伴う水毒に対しては、鍼だけで無理に水を動かそうとするよりも、お灸の「温熱刺激」によって気化(水を温めて巡らせる)を促す方法が理にかなっており、高い効果を発揮します。
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